先に述べたように、DNAという物質を見ると、「ヌクレオチド」と呼ばれているブロックが連続したチェーンになっているのがわかる。
そしてヌクレオチドはさらに、「塩基」「糖」「リン酸」と呼ばれる単位に分かれる。
このなかで、もっとも重要な部分が塩基とよばれるパーツで、遺伝情報を記録する文字としての役割を果たしている。
塩基には4種類あって、それぞれA(アデニン)、G(グアニン)、C(シトシン)、T(チミン)と呼ばれている。
レトロウイルスという特別なウイルスを除いて、すべての生物のDNAはこの4種類の塩基によって構成されている。
つまり、DNAは、このA、G、C、Tの4文字をさまざまな組み合わせで配列した、一種の暗号文のようなかたちでヒトを含む生物すべての遺伝情報をもっている。
たった4種類の組み合わせでは少ないような気もするが、デジタル信号が0と1だけであらゆる情報を処理していることを考えれば、そう不思議な構造ではないだろう。
そしてヒトの場合には、30億個の塩基によって10万通りの遺伝子を構成しているといわれる。
いってみれば、30億のDNA文字によって10万種類の″遺伝文″を書いていることになる。
この遺伝子のもっている情報が、ヒトや他の生物の性質や機能や形態を決めているのである。
遺伝子が突然変異すると、暗号文が変化するために遺伝情報が置き換わってしまう。
どんな遺伝子が変異したかによって、見かけが変わるのか、身体機能が変わるのか、生理機能が変わるのか。
場合によっては何の変化もないだろうし、ときとしては生命の維持が難しいこともあるだろう。
そのような個体が、自分と異なる性質をもつ仲間のなかで生存できるかどうか、そしてどのくらいの数の子供が残せるかによって、変異種グループの将来が決まってくる。
キリンの例でいえば、仲間より首が短く生まれてきた変異種は、食糧事情が悪くて子孫を思うように残せず、生存競争に敗れてしまったのかもしれない。
首が長く生まれてきたキリンは、より大量の食糧を得られたことで子孫を大量に残し、生存競争に勝ち残ったことになる。
このようここから推測できるのは、大昔に、生物の基本パターンとなった遺伝子DNAをもつ生命があって、そこからさまざまなバリエーションをもった遺伝子が派生したという、生物進化の歴史である。
次の世代を作る繁殖にあたって、ときにはAがTになったり、GがCになるといったDNAのコピーミスがおき、場合によっては同じ遺伝子がダブって複雑化したりという事態が繰り返し繰り返し起きた。
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